2008年10月04日

米国発金融不安は収まるか?

先月中旬、米リーマン・ブラザーズが破産法11(日本でいう民事再生法)の適用を受け、AIGにはFRBから資金が注入され、メリル・リンチがバンク・オブ・アメリカへ身売りした。 この米国の「金融恐慌」とも言える事態に米国政府は2年間で7000億ドル、約72兆円規模の税金を使い、住宅・不動産債権を中心に買い取るという「金融安定化法案」を議会に提出した。 しかし、この法案は政府と議会のトップクラスで合意が得られたものの、下院では否決。 修正法案が上院で可決され下院で再審議されるらしい。 ロイターの電子版『3日に下院本会議で採決へ』によると、下院の民主党院内総務は「3日に下院本会議で議論し採決を行う」としているが、下院議長のペロシ氏は「法案が可決されると確信できるまで採決するつもりはない」と言い、約14兆円の減税施策と預金保護を約2600万円(25万ドル)まで引き上げることを抱き合わせて何とか現地時間の3日に可決された。

自民党の総務会長である笹川堯(たかし)氏は、米下院で金融安定化法案が当初否決されたことについて、「下院議長は女性でしょう。」云々と女性蔑視に取られかねない発言をしたらしいが、米下院の金融安定化法案は否決は恐らく議長が誰であれ、仮に共和党が議長でも否決されていたと思う。 何故なら、法案否決は米国民の声が反映したものであるからだ。

リーマン・ブラザーズやメリル・リンチ、モルガン・スタンレー、そして、業界1位のゴールドマン・サックスなどは、日本では証券会社として紹介される場合もあるが、アメリカでは「投資銀行」という位置づけである。 彼らはコンシューマ(一般客)は相手にしない。 大企業や富豪しか相手にしないのだ。 それ故、多くの米国民は、「何故金持ちを助けるために税金を投入しなければならいのか」という不満が大きい。

また、ウォール街の経営者達にも、米国民からは憎悪の目が向けられているようだ。 例えば、メリル・リンチがバンク・オブ・アメリカへの身売り交渉を始めるに当たって、経営者達は、まず、自分たちへの経済的保証の確認を求め、その了承を得てから交渉に入ったという。 6万人の部下の雇用が危ういというときに、自分たちの経済的な保身を優先したのだ。 このことは、米通信社のブルームバーグが報じている。 それによると、最高経営責任者(CEO)のジョン・セイン(John A.Thain)氏が合併後の新会社に入社しない場合、1100万ドル相当の新会社株を受け取る。 また、トレーディング部門の責任者に就いたばかりのトーマス・モンタグ(Thomas K. Montag)氏は、メリル・リンチへの移籍時に貰うことが決まっていた2008年分の3900万ドルのボーナスとは別に、今回の合併に伴って解雇・降格される場合、3000万ドル相当の株と640万ドル相当のオプションを受け取れる、という。 これを知ったアメリカ国民の怒りは収まらないだろう。 普段から巨額の報酬を受け取ったうえ、いざ会社が破綻するとなると従業員を見捨てて自己保身に走る・・・。 そういう輩が跋扈するウォール街を救う必要性を感じるアメリカ国民はいまい。 ウォール街を跋扈するこうした経営者の罪と自己責任を明確にすることを法案化しない限り、今のままでは、アメリカの国民の支持を得るのは難しいのではないだろうか。


今回、米国の金融安定化法が可決したからといって、現在の金融不安が可決する訳でない。 住宅・不動産債権を米国が買い取るといっても「どういうルールで買い取る」かは明らかでない。 米国のサブプライムローンに関連する住宅・不動産債権の残高は15兆ドル以上とも言われている。 今回可決された7000億ドルでは焼け石に水だろう。 実際は、債権の「時価」で買うことになると思うが、そうなると、金融機関は経営上のバランスシートから債権の損出を切り離せる反面、同時に資本不足に陥ることになる。 つまり、日本で起こったバブル崩壊後に銀行が行ったのと同じく、「貸し渋り」「貸し剥がし」が起きるだろう。 結果として、アメリカの内需は更なる収縮が起こる。 例えば、車を買うにも「貸し渋り」でローンが組めなくなる。 当然、日本車も米国では売れなくなる。 米国の不況は、米国の金融機関がサブプライム債権などの不良債権を一掃し、体力が回復するまで続くことになる。 つまり、現在の外需頼みの日本経済は、日本政府が国内の産業の構造改革に乗り出し、内需拡大政策に転換しないかぎり、アメリカに引きずられて更に永い不況に喘ぐ事になる。

ただ、日本の内需拡大といっても、むやみに公共事業・土建国家を拡大をしても、これまでの経験から日本の国の借金を増やすだけで景気対策にはならないことを付け加えて記しておく。 今日の日本の不景気を鑑みれば、失われた10年、プラス小泉政権下の5年を見ても、これまでの日本政府・与党自民党の土建国家&新自由主義の経済政策の失敗は明らかであろう。
posted by 少彦梛 at 06:40| Comment(0) | 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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