2008年10月13日

給油活動は国際貢献になっているのか?

ロイターの電子版「対テロ新法改正、審議入り」によると、先日10日に、インド洋での海上自衛隊による給油活動を延長するための「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法」改正(延長)案について政府側が趣旨説明し、審議入りしたそうだ。 早ければ、参議院で否決後、衆議院の3分の2条項を使って24日に再可決、成立する見込みという。 また、時事通信社の電子版、「アフガン支援、給油に専念」によると、アフガニスタンへ戦闘部隊を派遣していない日本やNATO加盟国に対し米国からアフガニスタン軍育成のために少なくとも1兆7千億円の拠出を求めている件について、「給油活動継続が現在の最大の仕事で、これを確実にやることが一番大事だ」と述べたらしい。 別の報道では、9日にキーティング米太平洋軍司令官と会談した浜田靖一防衛大臣も、「活動の意義を国会、国民に丁寧に説明して支持を得るよう努力したい」と応えたという。 少なくとも、政府・自民党はインド洋上での無料給油スタンドを継続する気マンマンのようだ。 ただ、旧テロ特措法の審議の際も、現行の所謂新テロ特措法の可決にあたっても、安倍政権や福田政権が国民に丁寧に説明してきたとは思えない。 昨年の各報道機関の世論調査でも、約6割の国民が、海上自衛隊のインド洋上での給油活動継続に反対だったと記憶しているが、それが証明している。 今回も「国民が納得できる」説明は期待できまい。


実際のところ「テロ対策海上阻止行動」がテロとの戦いに功を奏してるとも思えない。 事実、IMFの報告では、'07年のケシの生産量は、ターリバーンがケシ栽培を禁止した'01年の44倍の8200トンにのぼるという。 国際市場に流れているアヘン(ケシから採れる)の90%はアフガンからのものと言われ、ターリバーンの資金源になっている。 このケシにより豊富な資金を得たターリバーンは武器を調達している。 そして '05年以降、アフガニスタンのテロ活動は再びターリバーンが勢力を盛り返し、治安も儘成らない状況だ。 英国軍の駐アフガニスタン最高司令官のカールトンスミス准将が、ターリバーンとの戦闘について「我々はこの戦いには勝てない」と悲観的な見方を示した、と英紙サンデー・タイムズ(電子版)が報じているという。 これらの状況は、テロ対策海上阻止行動が結果として役に立ってないことの裏返しではないだろうか。

また、新テロ特措法も直接的な実績を見ても首をかしげざろう得ない。 情報自体があまり公表されてないから分かり難い面もあるが、防衛省の資料や、昨年のテロ特措法(旧法)改正案が審議された時に提出された資料「テロ対策特別措置法に関する資料」(270P)を読むと、効果が無いことが読みとれると思う。 一部、'04年(H16)を抜き出すと、海上阻止行動(OEF-MIO)艦船の臨検で検挙されたのは以下のとおりである(防衛省公開分)。
 ・大麻約280万ポンド(1270トン?、末端価格約11億円)
 ・ライフル・軽機関銃540丁、同弾薬12000発、14.5mm機銃2丁、同弾薬84発
この間、海上自衛隊が給油したのは、約5万トン、約20億円。 少し時期はズレるが '04年度に海上自衛隊が給油活動に要した費用(歳出)は合計約82億円だ。 海上阻止活動に参加してる他国の艦艇の艦数は不明だが、「大金を投じて、成果はたったこれだけ?」という感が否めない。

それから、日本の給油した燃料が本当にテロ対策のみに利用されてるかも疑問だ。 新テロ特措法は、給油の条件を「テロ対策海上阻止行動」に使われるものに限定している。 ただ、これは参加国からの申請を信じるしかない。 だが、かつて米国の補給艦を介して米空母キティホークに間接給油されていたが、その時、実はキティホークがイラク戦争参戦の命を受け活動していたのではないかとの疑惑もある(米軍は否定。給油時はあくまでテロ対策海上阻止行動中であったと強弁している。給油後イラク戦争に実戦参加。)。 他にも '04年度にはパキスタンの軍艦へ約5300kLの給油を行っている。 米軍、仏軍に次ぐ給油量である。 そのパキスタンは、カシミール地方の領有権をめぐって対立するインドとは現在停戦状態であり、対インドを想定したパキスタン海軍の軍事演習に流用されている・・・可能性も考え得る。 当時のパキスタンはムシャラフ大統領統治下にあったが、ムシャラフ大統領は軍出身(統合参謀本部委員会議長)であるし、パキスタンの情報機関・3軍統合情報部はターリバーンに資金支援しているという報道もされている。 極めて不透明な国であるのは事実だ。 

OEF(Operation Enduring Freedom・不朽の自由作戦)とその作戦の一部である海上阻止行動(OEF-MIO) は、国連での位置付けは、あくまで国連憲章第51条基づく「米国の自衛権の行使」とそれに伴う集団的自衛権の行使である。 世界各国は、給油を含むロジスティクスも軍事行動と認識している。 つまり、インド洋上での海上阻止行動に参加する艦船へ給油することは、他国は「集団的自衛権の行使」に他ならないと認識していることとなる。 日本が国内で「集団的自衛権」に当たらないと強弁しても、それは国内だけ通用する言い訳であって、日本政府が普段好んで使う言葉である「グローバル・スタンダード」ではないことを銘記していただきたい。 実際、昨年、当時の防衛大臣であった小池百合子氏がパキスタンへ行き、記者会見で「給油活動を中止することは国際社会やテロリストに「ネガティブなメッセージ」を与えてしまう」と発言。(小池氏はイスラム圏であるエジプトのカイロ大卒というが、イスラム社会であるパキスタン国内でこのような発言をした場合、イスラム原理主義者へ与える影響が大きいことを考えはしなかったのか?)

その後、アフガニスタンで平和貢献活動をする民間団体・NGOは現地市民による敵対感が強くなり活動を縮小せざろう得なくなったらしい。 また、パキスタンでの小池氏の発言が、8月にNGO・ペシャワール会の伊藤和也さんが拉致された原因、または、遠因になったのではないかとも言われている。 実際AFP通信の電子版「パキスタン情報機関が関与か」でも、伊藤氏の拉致にパキスタンの情報機関の関与が取りざたされている。 他の報道でも、パキスタンのイスラム原理主義者の関与が取りざたされているのも事実だ。 少なくとも、これまで敵対視されていなかった日本人も、現在ではパキスタン・アフガニスタンの両国の国民からは日本も米国に加担(集団的自衛権を行使)する敵国の一員と見る市民がどんどん増えているようだ。


軍事力ではテロは解決できない。 先の英軍准将の言葉も、英軍が、アイルランド独立闘争として対英テロ闘争を繰り返していたIRAを武力だけで封じることができなかった経験を踏まえての発言ではないか。 武装闘争に対して軍事力はあるていど必要なのは分かるが、米国のように軍事力一辺倒では解決しない。 強大な軍事力投入によるテロとの戦いが逆にテロ活動を拡大している結果になっている。 米軍などの軍事行動の犠牲になったアフガニスタンの一般市民が、 '05以降の累計で3200人を越えているという調査報告もある。 犠牲になった民衆の身内の多くがテロ活動に身を転じたり、あるいはテロリストを匿うのが現実として起こっている。 アフガニスタンの副大統領が、和平に向けてターリバーン側と交渉を開始したらしいが、ターリバーン側は「外国軍がアフガニスタンから出て行かない限り和平には応じられない」と主張しているという。 テロとの戦いと称する軍事行動がアフガニスタンの和平を阻害しているという一面も存在する。 なにも、軍事力を全否定するつもりはない。 テロリストによるゲリラ活動(自爆テロ含む)などの武装闘争から民を守るには、軍事力も必要だ。 ただ、テロリストを攻撃する場合は、必要以上の軍事力行使(空爆など)は一般市民を巻き込み、それが結果として新たなテロを生む。

閑話休題

日本も、自衛隊の補給艦、護衛艦の派遣といった、米国の行う軍事力行使優先のテロとの戦いに追従する道をもう一度見直し、新しい手法によるテロとの戦いを議論し、模索する時期に来ているのではないでしょうか? 合わせて、国際貢献に寄与しない、もしくはその度合いが低いインド洋上での海上阻止行動の補給活動はもう止めるべきだろう。
posted by 少彦梛 at 13:33| Comment(0) | 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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