2009年01月26日

ハドソン川の英雄

共同通信社の電子版、「訓練通りの仕事した」によると、USエアウェイズの旅客機がダブル・バードストライクで左右2つのエンジンが停止したと思われる事故で、ニューヨークのハドソン川に不時着し、乗客乗員155人全員の命を救った「ハドソン川の英雄」といわれるチェスリー・サレンバーガー機長が自宅のある地元ダンビル市から表彰され、家族とともに式典に出席し、市民ら約3000人から称賛を受けたという。

確かに、彼の判断と操縦は賞賛されて然るべきだし、私も素直に「素晴らしいパイロット」だと思う。 地元に自宅があるというだけで、住民も表彰してあげたくなる・・・いや、住民が、一目彼を見てみたい、または、彼と同じ地に住んでいることを光栄に思うのは一般的な感情だろう。

しかし、当のサレンバーガー氏は英雄扱いされるのを憚ってか、遠慮してか・・・、集まった市民らに感謝を表明するとともに、「乗員全員が訓練された通りに対応したに過ぎない」と謙虚にコメントしたという。

事実、乗員乗客全員が助かったのはサレンバーガー氏の見事な不時着水の腕だけではなく、当日の気温が−6℃とされる中、現場を目撃したフェリー会社の従業員達などがただちに救出の船を出し、脱出開始4分後には現場に到着、救助活動をした賜物であろう。 恐らく、ハドソン川に救助に駆けつけたフェリーや観光船の企業・従業員にはニューヨーク市から表彰や感謝状を贈られているものと思うが・・・。


サレンバーガー氏は、全力で自分の責務を果たしただけである。 氏に限らず、旅客機の乗員・パイロットは、緊急事態においてはほぼ全員が、全力を駆使して自らに与えられた責務を全うするであろう。 御巣鷹山(正しくは、高天原山と聞く)に墜落し死者500人以上という大惨事となった「日本航空123便墜落事故」でも、クルーは最後まで機体の姿勢制御に全力を尽くしていた。 公開されたボイスレコーダーの音声を聞く限り・・・。

ちなみに、日本航空123便事故は奇跡的に生存者が4名いた。 しかし、墜落直後にはまだかなりの数の乗客が生存していたものの、捜索隊の到着する翌朝までの長い時間の間に次々息絶えたとの証言があると聞く。 今回のUSエアウェイズの旅客機不時着水も、救助が遅ければ、冷たい水の中で体温を奪われ亡くなったり、心臓発作などを起こして亡くなる人が出た可能性は否定できない。 155人全員の命が助かったのは、多くの人が懸命に救助の努力・行動をした結果である。 サレンバーガー氏の力があってこそだが、氏ひとりの力だけで155人の命が助かったわけではない。 サレンバーガー氏が一番にそのことを理解しているのだと思う。





そんな中、サレンバーガー氏ひとりを英雄扱いするのは何故なのか。

ダンビル市側はパレードまでやろうとしたそうだ。 もちろん、良識あるサレンバーガー氏は辞退したそうだが(苦笑)。 一部では、誰が言い出したのか分からないが、サレンバーガー氏の銅像を立てようという報道もあったと記憶している。

マスコミが氏を持ち上げ、市民が氏を英雄と思うのは、まあそれは良い。 ただ、ダンビル市がパレードまで行ってサレンバーガー氏を英雄に祭り上げようとするのは、実は単なる市長の売名行為でしかないだろう。 市長は今回の事故には何も関係ないのだ。 もうひとつは、今回の事故発生そのものの重大性から世間の目を逸らそうという思惑を持つ人達も居るものと思われる。 例えば、2年前の夏、那覇空港の駐機所で燃料漏れを起こし、炎上した中華航空機事故の時がそうだ。 当ブログの「中華航空機炎上事故に思う」にも記しましたが、事故が起きた機の機長を表彰した台湾政府などがこれにあたるだろう。 繰り返しになるが、中華航空機炎上事故で死者がでなかったことの最大の功労者は「那覇空港の現地整備員であった中華航空の社員」だと私は思っている。

つまり、誰かを、特に行政や為政者が「英雄」を作り上げる(祭り上げる)のは、為政者自らの売名行為だったり、悪政や失政から市民や国民の目を逸らす。 そういった目的が隠されている場合が多いのだ。

我々は、偉業を成した人には大いに賞賛を送るべきだが、その偉人を「英雄扱いする人」達に気を許してはいけない・・・。



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posted by 少彦梛 at 22:39| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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