2008年08月13日

南オセチアでの紛争

8月8日に始まったグルジアの南オセチア自治州での、グルジア軍とロシア軍との紛争は、読売新聞の電子版『露が作戦終結命令』のとおり12日に一応収まった。
この間、日本は北京オリンピックに浮かれ、TVのニュースでの今回の紛争の扱いは小さく一般の人にはほとんど紛争の理由は語られていない気がしてならない。 私自身も実際のところ良く分からない・・・。 


実は、昨年の3月、当時の安倍元首相とサーカシヴィリ大統領(グルジア)とが会談し、「共同声明」が出されていることはあまり知られてないだろう。
この中で、二国間関係全般として『双方は、民主主義(中略)という基本的価値を共有する両国の関係を一層強化し、コーカサス地域の安定と繁栄に貢献していく考えであることを確認』している。
また、『アブハジア問題及び南オセチア問題が国際的に認知された国境内でのグルジアの領土一体性の原則に基づき平和的に解決されることが、グルジア及び南コーカサス地域全体の平和と安定にとって不可欠であるとの見解』も共有している。
要は、日本国として、アブハジア独立共和国も南オセチア自治州も「グルジアの国内(領土)」であると認め、グルジアを含めたコーカサス地方の安定に貢献していく、としているのだ。


しかしながら、今回の紛争で日本の外務省がロシア・グルジア両国に対して発したのは、「憂慮の念を伝えるとともに、事態がこれ以上エスカレートしないよう、すべての当事者が自制して、和平協議のテーブルにつくよう」と求めただけだ。 現在進行形で行われている紛争当事者同士に対し、この単なる期待でしかない求めがどれほどの意味を持つのだろうか。 残念ながら、日本には紛争解決に向けたの外交力そのものが無いだけではなく、日本としてのスタンスを国際的に主張する力量も無いのだ。 それを鑑みるとグルジアとの共同声明も虚しく聞こえるだけだ。
本来、グルジアとの共同声明に基づけば、グルジアの領土の南オセチアにロシア軍が駐留していること(ロシアは平和維持部隊と称して以前から駐留)を非難し、合わせて両軍の撤退と和平協議を求めるのが筋ではないか。 外務省のリリースどおりなら、ロシア、グルジア双方から無視されるだけだ・・・。



今回の南オセチアでの紛争の沈静化は、グルジア側から一旦軍を引きロシア側に「即時停戦と、それに向けた対話の用意がある」と伝えたことから始まったようであるが、仲介役にフランスのサルコジ大統領とクシュネル仏外相が当たっている。 これは、おそらくEC(ヨーロッパ共同体)の議長国がフランスだからであろう。 グルジア側からすれば、EU(ヨーロッパ連合)加入を目指す立場からこれをむげにはできまい。 もともと、グルジア軍が撤退したのは、ロシア側が南オセチアをほぼ制圧し(一部には南オセチアを出てゴリという都市まで進行したとの報道もある)、首都トビリシへのロシア軍進行を迎え撃つため、とも思われる。


そもそも、グルジアは旧ソ連邦が崩壊して以降、次第にロシアとの距離を取り、欧米との関係強化に努めてきている。 また、グルジアは現大統領下で、EU加盟・NATO加盟を目指している。 ちなみに、イラクへも米英に次ぐ約2千人もの兵力を送り込んでおり、また、今回の紛争ではこれらイラク駐留グルジア軍の帰還に米軍が輸送部隊を提供したとも聞く。 ロシア側からみれば、グルジアは黒海へ繋がる要所でもあり、カスピ海油田から地中海へ伸びるパイプライン(アゼルバイジャン〜グルジア〜トルコ)の存在は、カスピ海のロシアの原油利権にも大きな影響を与えている。 (注:カスピ海は領海が確定していない) この上、NATO加盟で米軍などが駐留すれば、ロシアとしては銃を持って玄関に上がられるに等しい。 ロシアの戦略上の拠点として、何とか押さえておきたい要所がグルジアなのだ。



もともと、グルジアは、アブハジアと南オセチアの独立問題を抱え、この2つの自治州とサーカシヴィリ大統領の対立により国際的には多くの批判を受けてきた。 そこに乗じたのがロシアだ。 ロシアに支援を求めてきた2つの自治地域の人々に対し、ロシアは自国政府発行のパスポートを発行している。(つまりはロシア国民、または、永住権を持つ者と認めているに等しい)

そして、「ロシアはあくまでも人道的見地から南オセチアに介入しているのであって、民間人を守り、(サーカシヴィリ大統領による)民族浄化を防ぐために介入している」のだと、ロシアの外相は主張している。 この主張は、かつてNATO軍と米軍が旧ユーゴスラビアのコソボ紛争に介入したのと同じ理屈ではないか。
(前記の日本とグルジアの共同声明を基に、両自治区はグルジアの主権が及ぶ領土であると、何故このロシアの主張に日本政府が声を大にして異議を唱えないかは不思議でならない。)


しかも、フィナンシャルタイム誌に対しスウェーデンのビルト外相は、「外国領内のとある地域に、自分たちの国が発行したパスポートをもつ人たちがいるからといって、その地域に軍事介入していいなど、そんな権利はどこの国にもない。 国内の人たちを保護する義務は、その人たちがいる国の政府にある」と応えた。 そして、「自分の国のパスポートをもつ人たちがどこか別の国にいる。 だから、その相手の国に軍事介入していい・・・この教義(ドクトリン)を駆使しようとしたがゆえに、欧州はこれまで何度も戦場と化した。 だからこそ、(ロシアが今回主張する)こんな教義(ドクトリン)は何としてでも、徹頭徹尾、否定しなくてはならないのだ」とも語っている。 (ちなみにスウェーデンはNATO(北大西洋条約機構)に加盟していない。) 


ビルト氏の言はもっとだ・・・、と思うのだが、「我が国は『平和協力国家』として、国際社会において責任ある役割を果たしていかなくてはなりません。」と述べた福田首相は、ビルト氏の発言をどのように聞くのだろう?
自衛隊のイージス艦が漁船を沈めた時も「あー、そうだってね。大変ですね」と発言する人だ。 遠い国での紛争も同様に「大変ですね」で済ますのかもしれない(苦笑)。

そして、今回の紛争の調停は難航が予想されているだけに、結局日本には、調停役のEUからも当事者たるグルジアからも、「何もしなかった国」としての評価(批判)だけが残ることになるだろうか・・・。


追記
時事通信社電子版
「国際司法裁にロシアを提訴=民族浄化と主張−グルジア」

16日追記
AFP通信より「【図解】ロシアとグルジアの軍事衝突」
posted by 少彦梛 at 20:57| Comment(0) | 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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